【リトリート体験記⑦】スパイスを擂り、ココナッツを削る。バリの台所で学んだ「命の巡りと祈り」

バリにおいて、食は「命への捧げもの」

リトリート4日目は、クッキングスクール「Green Kitchen」での体験から始まりました。
バリ島において、食事は単なる身体の栄養補給ではなく、神様や自然への「捧げもの」という大切な意味を持っています。

その味わいの核となるのが、「バサ・グヌップ」と呼ばれる「完全なスパイスペースト」です。
ターメリック、ガランガル(生姜の一種)、生姜、レモングラス、唐辛子、にんにく、赤わけぎ……。
これらを昔ながらの石臼を使い、自分の手でじっくりとすり潰して香りを引き出していきます。
機械を用いて一瞬で粉砕するのではなく、この「すり潰す時間」そのものが、昔から丁寧な祈りの時間とされてきたのだそうです。

生まれてから旅立つまで。土地とともに生きる人々

クッキングスクールへ向かう前、オーナーさんに連れられて地元のローカル市場へ立ち寄り、新鮮な食材を選びました。

市場から車でさらに移動し、車を降りてから会場へ向かう道の途中、草の生えた場所に、穴の開いているところとこんもり盛り上がったところがありました。墓地だそうです。

「バリの人々は、この生まれ育った土地で暮らし、この土地で命を引き取り、土に還るんですよ」と教えてくださいました。

生きることと死ぬことが、同じ土地の中で自然と地続きになっている。そんなバリの人々の暮らしのあり方に、静かな感動を覚えました。

削る所から始まる、命への感謝

調理が始まると、そこには徹底的にその土地の素材を生かす工夫が詰まっていました。
薪で火をおこし、ココナッツの殻で作られたお玉を使い、料理に使うココナッツオイルも、なんとココナッツの実を削るところから自分たちの手で行います。
手間も時間もかかりますが、ひとつひとつの工程を進めるうちに「植物や動物から命をいただいているんだ」という実感がじんわりと湧き上がり、心と身体の奥まで感謝の気持ちが広がっていくのが分かりました。

人も、動物も、残った料理も。すべてが自然の中に巡っていく

料理が完成すると、みんなでテーブルを囲んで食事の時間です。

驚いたのは、リトリート参加者の私たちだけでなく、調理を教えてくれたレストランのスタッフの方々、そしてどこからともなく集まってきた犬や猫たちまでもが、同じ空間で自然に料理を分かち合っていたことでした。

「もし日本のバイキングで、ウェイトレスさんが隣で一緒に食べていたら大変なことになるなぁ…(笑)」と一瞬考えてしまったのですが、そこにあったのは差別や境界線のない、とても大らかで無駄のない、温かな循環の風景でした。

残ったお料理も、捨てられるのではなく、そのまま土へと還されていきます。
「いただいて終わり」ではなく、すべてが巡り、次へと続いていく。

日常の忙しさの中で忘れていた「命の循環の中に生かされている」という本来の豊かさを、美味しいお料理とともにしっかりと噛み締めた1日となりました。

頑張ってきた自分へ。3時間の贅沢なスパ体験

その日の夜は、みんなお腹がいっぱいだったこともあり、各自で自由時間を過ごすことになりました。
そこで私は、主宰のかよ先生に教えていただいた現地のスパへ向かい、生まれて初めての本格的なスパを体験することに。

優しく温かな手に身をゆだねる、3時間という至福の贅沢時間。
心地よすぎる施術に包まれる中で、これまで日常で張り詰めていた緊張や、背負い続けていた肩の荷が、スーッと溶け出していくのを感じました。
「ああ、本当に体の力が芯から抜けていく……」

自分の身体と心を丸ごと労わり、慈しむような深いリラクゼーションとともに、バリ島最後の夜は静かに更けていきました。

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